親が子にすること

親からは話しかけない

これまでの説明で、子どもが不登校、ひきこもりになった理由が概ねわかったことと思います。
そして子どもの元気を取り戻すには、親の方が自分を変える努力をしなければならないことも、内観を通しておわかりいただけたでしょう。
結局、親の脳グセを上書きしないと子どもの状況は変化しないのです。

これまで説明してきた一連の作業は、すべて自分の頭と心ですることです。
では、具体的に親が子どもに対して行動としてすることは何でしょうか。

目的は親の過干渉を排除し、主導権を子どもに渡すことです。
子どもは自立の時期を迎えていますし、もうすでに親の価値観は何でも知っていることも思い出してください。

となると、実は、親から子どもに話すこと、伝えることは、もう何もないのです。
すなわち、親がすることというのは、「親からは話しかけないこと」となります。

私が影響を受けている『思春期ブルー研究所』の故北島先生は、子どもの思春期ブルーを解消するためには、親が「黙る」としていました。
しかし、人間というものは自分の行動を自分で制限するのは、そう簡単なことではありません。
ダイエットや禁煙、禁酒なども同じだと思いますが、「話すのを禁止される」とかえって難しい、できない、ということもあると思うのです。

例えば、「黙る」と言われているのに、子どもが返事をせず黙っている分にはしゃべったことにはならないだろうと判断して、過干渉な指示をやめない親がいます。
また「黙る」が親の頭の中で「声を出さない」と変換され、子どもの話しかけに対しても黙ってしまい、結果的に無視してしまうケースもあります。

こうしたことを避けるために、私は自分のオリジナルで「親からは話しかけない」としています。
これは次の項目の「子どもからの話を聴き切る」とセットで一つと覚えて、同時進行するといいと思います。

ダイエットしているつもりでも本当は実行できていないから元の体重に戻っちゃった、とか、禁煙中の1本だけのつもりが、結局喫煙者に戻ってた、というのと一緒で、親の過干渉排除も実行している意識がないと、すぐに戻ってしまいます。
「親からは話しかけない」もダイエットと同じ。
一時的なものではなく、それが日常、生活習慣、となるくらいにすることが大事で、ゴールはなく、ずっと続けることを目標とします。

これまでしゃべり過ぎていた親には大変苦痛を伴う方法で、抵抗感を示す方が多いのですが、それはまさに自分を変えたくないという傲慢さと気づいていただくしかありません。
家族の団欒がなくなるとか、私の声かけがないと何も進まない、と思う方は、もう一度最初から読み返してください。
それもすべて親の思い込み、親の価値観の押し付けです。

そして知っていてほしいのが、親が話しかけなければ、子どもの方から話しかけてくる、という事実。
子どもは、本当は聴いてもらいたいことを内に秘めているのです。

では、次の項目へ…。

 

子どもからの話を聴き切る

思春期の闇、『思春期ブルー』に陥るタイプのST気質の子は、幼いころから自分の興味関心のあることに集中しやすく、時間を見計らって行動することが難しい性質のために、母親から事細かに指図されて育っている子が多いです。
お母さんも長年の習慣で、子どものことを自分の管理下に置いておかないと不安になっているので、子どもを把握しようとついつい質問や指示が多くなります。

そのため子どもから話しかけてきても、途中で割り込んで質問したり、自分の意見を言ったりして、子どもに最後までちゃんと話させてあげることがほとんどないと思います。

子どもは自分のペースで話したいように話せないので、親との会話にストレスを感じています。
途中でキレ始めたり、突然会話が中断することも珍しくないでしょう。

誰だって、自分の話を最後まで遮られずにちゃんときいてもらえたら嬉しいですし、好意的に肯定的にきいてくれた相手のことを信頼したくなりますよね。
『思春期ブルー』に陥った子どもとの関係が以前に比べて悪くなっているのであれば、まずは話しかけずに、子どもの話をきく専門になることが関係修復の鍵となります。

好意的に肯定的にきくためには、「知りたいの!教えて教えて!」という態度で話を「聞く」のではなく、(本当は何を伝えたいのかな)と想像力を働かせ、「心の中まで聴く」ことを意識します。

絶対に話の腰を折らずに、「最後まで聴き切る」ことが重要です。

そのコツとなるのが「相づち」と「子どもの言葉の繰り返し」。
親子関係が改善するまでは、親から発してよい言葉はこの2種類だけのつもりで、徹底して「聴く」ことに取り組んだ方が成果が出やすいようです。
相づちの仕方を何パターンか取り入れれば不自然ではありませんし、子どもの言葉を繰り返すことできちんと聴いていることも伝わります。

しかし、やってみるとわかるのですが、この「心の中まで聴く」「最後まで聴き切る」は、とっても難しいです。
親から子にすることの一つめとしてあげた「親からは話しかけない」というのは、行動としては自主的で能動的なものですが、「聴く」ことは相手に主導権がある受け身です。
そのため、これまでなんでも過干渉に先手先手で動いていたお母さんにとっては苦手なんですね。

子どもが不登校になったりひきこもりになったのをきっかけに、親がこれまでの過干渉な関わりをやめようとして「親からは話しかけない」と決めても、「話を聴く」心構えができていないと、結局「態度が過干渉なまま」となってしまいます。
上から目線で相手をコントロールしようとしないで、尊重しながら聴く。
自分に甘くならず、相当の覚悟を決めて取り組まなければなりません。

何度失敗しても、話しかけずに聴き切ろうとチャレンジしていれば、必ず最悪の親子関係から脱することができます。
子どもの話を聴き切ることについては、これまでのブログ記事でも詳しく解説していますので、よろしければご覧になってみてください。

「聴くこと」第一段階
子どもの話を「聴く」「聴き切る」コツ


全て子どもに任せる

子どものことを、(私が一生懸命育ててきたんだから、この子は何でも知っている)と信じていて、親からは話しかけないを実行していれば、必然的に何をするのもしないのも、「全て子どもに任せる」に行き着きます。
過干渉を排除するということは、結局は「子ども自身に任せる」ということになっていくわけですね。

不登校のことで専門家に相談すると、
「お子さんを信じて待ちましょう」
「お子さんに任せてみてください」
とアドバイスされる方が多いと思いますが、実は『信じる』とか『任せる』のひとことには、お母さんの価値観をひっくり返す作業が必要となるわけです。

しかし、私がこれまで説明してきたような「内観」や「脳作業」のような内容は、ほとんどアドバイスされることはないと思います。
そのためお母さんの価値観がなかなか変わらず、いつまでも過干渉でい続けることになってしまうのです。
その期間が長引けば長引くほど、子どもの回復も遅れることになります。

子どもはSOSを発し続け、摂食障害やリストカット、起立性調節障害、パニック障害、強迫性障害、統合失調症など、身体的な症状、精神的な症状が出るようになります。

こうした症状は、子どもの生命の危機を察知した脳が、命を守るための働きとして司令を出しているのであって、決して子どもたちは怠けたいとか、サボりたい、という気持ちがあるのではありません。
子どもは行きたくても行けない、動きたくても動けない、やりたいことができない、と苦しんでいます。


このような状態の子どもに対して、「親からは話しかけずに、全て子どもに任せる」を実践するのは本当に覚悟が必要だし、勇気がいることです。
しかし、どん底まで沈んで、底をしっかり蹴らないと浮上できないんだと信じて、どんな些細なことでも、また大きな決断であっても、全て子どもに任せるようにします。

親からは話しかけずに任せるわけですから、これまでしていたあいさつや声かけもしません。

すると途端に母親の頭の中は子どものことでいっぱいになってしまいます。

いつ起きるのかしら?
いつ食べるのかしら?
いつお風呂に入るのかしら?
学校はどうするのかしら?
………

挙げればキリがないほど子どものことを気にしてしまいますが、これが過干渉です。
心は鏡の法則がありますから、子どもは母親が自分をチェックしていることをちゃんと感じています。
お母さんは、子どもへの思いを断ち切るため、何度も何度も内観し、脳みそに上書き作業を繰り返します。


お母さんが子どもからの話をうなづきながら最後まで聴き切ることがうまくなり、目の前にいない子どものことを気にしなくなり、さらに自分自身の時間を楽しむようになると、子どもも(親から任せられている)と感じ始めるのです。
ここまできてやっと、子どもは『思春期ブルー』の底をしっかりと蹴ることができるようになります。

 

子どもからの要望に応じる

子どもが本当の「底」から浮上を始めると、やりたいことや欲しいものなど、少しずつ親に言うようになります。
それがエネルギーが出てきた目安でもあり、子どもが動き出せる好きなこと、夢中になれることは、親としてもお金のかけどころとなります。

ブログでは「動的な要求に応じる」として解説しているので、詳しく読みたい方はこちらから読んでください。

過保護と過干渉4
過保護にするには「動的な要求①」

「親から話しかけない」というのが、「全て子どもに任せることになる」、というのと同じように、「子どもの話を聴き切る」ということは、「子どもからの要望に応じる」ことにつながっていきます。 
この、子どもの要望に応じる、要求を叶える、ということは、言葉を変えると「過保護にする」ともいえます。
これまで親の「過干渉」を排除するための方法をずっと説明していますが、「過干渉」というのは、親の望みや願いを叶えるために子どもを動かすことでした。
逆に、子どもの望みや願いを叶えるために親が子と共に動くことは「過保護」といえるでしょう。


この「子どもの願い」という視点を加えた「過保護」という表現は、一般的な子育てで使用される言い方とは異なるため、なかなかわかりにくいかもしれません。
しかし私自身はST気質の子のマイノリティーな子育てをする上で、とてもわかりやすい表現を教わったと思い、ブログでも使用しています。

不登校やひきこもりの子どもには、「過干渉」を排除して「過保護」にする必要があるのです。
この「過保護」は「甘やかす」という意味ではありません。
「甘やかす」は、先回りして準備することなので、これは「過干渉」に当たります。
どちらかといえば「甘えさせる」という言い方が「過保護」に近いのではないでしょうか。
子どもの希望に沿って願いを叶え、甘えていいことにしているからです。

この、「過保護」(子どもの要望を叶えるために親が行動すること)の別表現としては、「その子ならではのニーズを、具体的にサポートすること」という表現が適切に感じます。

こういう視点を持ち合わせていると、 親からは話しかけないでいても、子どもの無言の要求を察して子どものニーズに応えられます。
ブログでは「静的な要求に応える過保護」と解説しているのでぜひご覧ください。

過保護と過干渉5
過保護にするには「静的な要求①」


子どもは、親から任せられている、と感じるようになると、親が本当に過干渉ではなくなったのか、それとも前と同じなのか、あの手この手で試してきます。

そのため親は、子どもが欲しい、やりたい、と言うことに対して、無条件に叶えることが大切となるのです。
拒否したり、条件をつけたりすることは、以前していたやり方と同じですから、親が変わったことを証明するためには、「無条件」がポイント。

子どもは敏感ですから、親の困った表情一つで、やっぱり受け入れられていない、任されていない、と素早く判断し、また後退してしまいます。
ここでどれだけ親が子どものために動けるか、で子どもの回復の速度が変わってきます。


ST気質を持っている場合、苦手なことやストレスを感じることに時間を取られるとどんどんエネルギーを消耗してしまいますが、自分の好きなこと、得意なことをとことん追求できると、本来の実力を発揮できます。
これまで不登校やひきこもりになっているのであれば、ストレスを感じないで過ごせるような環境作りをすることも、子どものニーズに応えることになりますね。

このように、その子の気持ちぶりを察し、欲しているもの、いのちの輝きに必要なものを、具体的にサポートすることが「親のすること」です。
その子ならではのニーズですから、誰かと、何かと、比べる必要は全くありません。
どんな子でも、どんな状態でも、この世でその子がその子なりに、いきいきと生きる権利があるのですから。

子どもは、親から大事にされ、愛されていると心底実感できると心が膨らみ始めます。
ペチャンコにつぶれていた自己肯定感、自尊感情も少しずつ回復してくるでしょう。






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